失火責任法とは?

9月1日は防災の日

防災の日は、皆様もご存じの通り、1923年9月1日に発生した関東大震災にちなみ、1960年に制定された日です。

当時は木造住宅が密集していたため、地震による倒壊被害より、火災被害の方が甚大な被害だったそうです。

火事になった場合の責任は誰にあるのか?

当たり前ですが、他人の所有物を壊したら弁償しなければなりません。

所有権をはじめとする財産権を侵害した者は、その損害を賠償をする責任があると民法では定められています。いわゆる損害賠償責任です。

しかし、火事の場合、焼失した隣接の家屋を賠償するとなると莫大な損害額となり、損害を賠償しなければならない責任があっても、金銭的に賠償ができないという結果になってしまいます。

失火責任法とは?

そこで、失火責任法という特別法(民法より優先する法律)があります。

失火責任法とは、

重過失を除いた失火による他人への損害は賠償しなくてもよい

という法律です。結局、加害者に責任を追及しても賠償できないのであれば、法律として意味がないので、失火に関しては、加害者に責任を追及せずに、各々で火事に備えましょうという法律です。(ただし、故意・重過失の場合は失火責任法の適用はありません。)

火災保険の保険金を算定する際に、お隣さんの家ではなく、ご自宅が算定基準になっていると思います。家財も、お隣さんのパソコンの被害ではなく、ご自宅のパソコンの被害に備えて加入しているはずです。

これは、お隣さんはお隣さんで火災保険に加入しなければならない事を意味しています。

大家さんへの賠償は対象外です

失火による損害賠償責任は負わないと記載しましたが例外があります。

それは、大家さんへの賠償です。

他人の財産に損害を与えた場合の賠償責任を失火責任法では想定しています。

しかし、大家さんへの賠償は、損害賠償責任ではなく、原状回復義務によるものです。

ややこしいのですが、火事による損害を賠償するのではなく、借りた時の状態に戻して返す義務があるという事です。

ですので、賃貸でお住いの方は、火災保険を大家さんの為に加入している事になります。

不動産を購入した方は、住宅ローンを借りる時に必ず火災保険に加入していると思いますし、賃貸でお住いの方は、不動産会社が損害保険会社の代理店なので、加入していると思います。未加入のケースはあまり考えられませんが、これを機にご確認下さい。

不動産ADR調停人
長縄隆二